仮面

　すると皮肉と捉えることもせず原田は


「まぁそれがきっと生きがいなんでしょうね、俺は」

　と言って、短いため息を吐いてタバコを口にくわえた。



　その何気ない言葉に妙な好感を覚えた市川は不意に笑みを浮かべた。



　気怠く言ってはいたが、隣を歩く原田の顔はどこか真剣で、どこかそれ以外のことを含んでいるような横顔に見えた。　　　　　　


　そのまままた無言になって歩いていく中、市川は不意に違うことを訊ねた。



　佐山って探偵事務所知ってます？、と。　　　　　


　すると原田は素早く市川に顔を向け


「黒沢と面識があるんですか？」


　と形相を変えて市川に迫った。



　あまりにも唐突な変化に、誤魔化しの言葉が思い浮かばなかった市川は驚いたように体を静止し、ただ頭を縦に振った。　　　　　



「・・・これもゼロってのが関わっているってのか・・面倒だな」　　　　　　



　原田がおもむろに小さくそう呟いたが、市川はそれを聞き逃さなかった。




「ゼロってのを知っているのか、あんた？！」