仮面

　野村はこれから２時間後に会えると言っていた。



　寝起きを満喫する時間はなかったが、会いたかった人物に会えることと原田と会うまでの時間を有意義に遣えることに市川は喜びを覚えた。



　すぐさま市川は準備に取り掛かり、カーキのシャツと黒いカーゴパンツを身にまとい、愛用のショルダーバックを携えて玄関を急いで出た。



　腕時計を確認するなり、市川は「よし」と言って、そのままそば屋に駆け込んだ。




「おばちゃん、天そばにとろろ。あと卵かけご飯、お願い！」



「はいはい。お急ぎ？」




「重要人物から連絡があった」と市川は興奮したように言いながら、両手人差し指を前に突き出した。



　それを聞いたおばちゃんは「そうかい。待ってなー」と大きな声で言って、奥の厨房に消えていった。