仮面
「おばさん！警察に・・だめだな」




　市川は外にいる中年の女に声を掛けたが、通路に座り込んだままで市川の声に反応することはなかった。


　すぐにバックから携帯電話を取出し、警察に通報しようと電話を耳に当てた。


　しかし何を思ったのかすぐに携帯を閉じ、周囲に目を配った。



　部屋はワンルームで、狭い一室にはパイプベッドに大きな机、そして天井に届くほどの本棚が大部分のスペースを使っていた。



　市川はすぐさま机と本棚に目を移し、殺人に繋がるような物を探した。



　本棚に並べられていたのは、何冊かの漫画の他、心理学関係の分厚い本だ。　


　バックの中にあった新品の軍手をはめて、何冊かの本を捲ったが、専門知識のない市川には理解できないことばかり記されていた。



「・・早くしねーと」




　ハンカチで汗を拭いながら、外にいる中年の女に気を配りつつ机に目を移した。



　するとパソコンの横に置いてあったメモ帳に市川は気がつき、急いで捲った。
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表紙・目次

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