仮面
 その瞬間時計に目を移したところを見ると、市川に興味を示していないか、それともジャーナリストと知って何かしらの嫌悪を抱いていたのかもしれない。



 しかし野村は嫌悪の表情を浮かべることなく、笑顔で市川の発言を待った。




「実は上田さんのことで聞きたいことがありまして」


「・・あいつ死んだんですよね。猟奇殺人だとか」




 声を低く弱く響かせて悲しさを表しているようであったが、実際のところ本当に悲しんでいるかは怪しい。



 その言葉のあとすぐにコーヒーを啜っている姿を見た市川には、少なくともそうは見えなかった。




「えぇ。上田さんが殺された週、会う約束をしていませんでしたか?」




 野村の様子を受けて市川は気を遣う素振りもせず、淡々とした口調で言った。


 市川の言葉に何かを察することもせず「日曜日ですね」と野村もまた淡々と答えた。
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