仮面
あとやることは、と考えたときに現場のアパートで聞き込みをしようと考えが浮かんだ。
そういえば大家に話を聞いたものの、アパート全住人はおろか上田の部屋の周囲に住んでいる住人から話を聞いていなかった。
思わず自分の額を右の掌で叩いた市川は、自分の落ち度に呆れつつもすぐさま駅に向かった。
戻るなり自分のアパートには寄らずに、市川は現場のアパートへ足を運んだ。
端から順に聞いていく時間はあったが、最初に目をつけたのは上田の部屋の真下の部屋だった。
アパートというのは隣より上下の方がその生活状況がわかり易いと市川自身経験があったからだ。
この時間に下の住人がいるかどうかが気掛かりではあったが、インターホンを鳴らすと気怠そうに男の声が聞こえてきた。
「初めまして。私、こういう者です。少し話をお伺いしたいのですが」
市川がいつもの段取りで名刺を渡して出てきた男性を見ると、相手は「またか」といったような表情を浮べていた。
その男性はすぐさま、上の部屋に住んでいた人間のことをしつこく訊ねられると予想したのだろう。
そんな男性の様子に狼狽することもなく、市川は質問を投げ掛けていった。
不機嫌そうでも男から発せられる言葉を聞くたびに、市川は舌舐めずりをしながらメモ帳にペンを走らせていった。
そういえば大家に話を聞いたものの、アパート全住人はおろか上田の部屋の周囲に住んでいる住人から話を聞いていなかった。
思わず自分の額を右の掌で叩いた市川は、自分の落ち度に呆れつつもすぐさま駅に向かった。
戻るなり自分のアパートには寄らずに、市川は現場のアパートへ足を運んだ。
端から順に聞いていく時間はあったが、最初に目をつけたのは上田の部屋の真下の部屋だった。
アパートというのは隣より上下の方がその生活状況がわかり易いと市川自身経験があったからだ。
この時間に下の住人がいるかどうかが気掛かりではあったが、インターホンを鳴らすと気怠そうに男の声が聞こえてきた。
「初めまして。私、こういう者です。少し話をお伺いしたいのですが」
市川がいつもの段取りで名刺を渡して出てきた男性を見ると、相手は「またか」といったような表情を浮べていた。
その男性はすぐさま、上の部屋に住んでいた人間のことをしつこく訊ねられると予想したのだろう。
そんな男性の様子に狼狽することもなく、市川は質問を投げ掛けていった。
不機嫌そうでも男から発せられる言葉を聞くたびに、市川は舌舐めずりをしながらメモ帳にペンを走らせていった。