タイムストッパー
 今となっては罪悪感が残るのだ。だから、戸井田は何があっても、女性に暴力を振るうことは最低な人間だと思っている。

「新聞で見ました」

 と、義母は言った。

 戸井田は新聞を読んだではなく、見たと表現した義母に不信感が募った。

 一緒に暮らしていたころなら、義母に対して暴言を吐いていたはずだ。

 戸井田もここ数年で大人へと成長したので、言葉を出すのに少し間があった。

「何を見たんですか?」

 戸井田はとぼけてみた。

「ここが小火騒ぎで新聞に小さく載っていましたので……」

 義母は歯切れが悪く、何か言いたそうである。事故のことなどではなく別なことだ。

 それに勝手に部屋に入ってきて、何をさがしているのだろうか。それも気になるところだ。

「今日はどうしたんですか?」

 戸井田はストレートに聞いた。

「あなたのお父さんの暴力が耐えられなくて、逃げ出し、一時は人間不信で独りで暮らしていました。あなたのことを心配もしましたが、やはりあなたのお父さんに会うには、恐怖で遠ざけていたんですが、最近、彼氏ができまして……」
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