タイムストッパー
 義母の年齢は四十代半ばで、そこそこ綺麗な顔立ちなので、男が寄ってくるのも納得できるが、彼氏と表現するのが引っかかった。

「再婚なさるのですか?」

「いえ、まだ、そこまで話していませんが……」

 義母は何が言いたいのだろうか。彼氏と四十代の女性が言うと、軽くしか感じない。

 十代から二十代なら、もちろん軽くも感じられるが、真剣な交際をしていると言う感じにも取れる。

 再婚の方向ではないのだとしたら、単なる肉体関係のみの、いわゆる大人の関係と言うやつだ。

「離婚したいんですね?」

 戸井田は義母だから冷静になれた。

 義母は軽くうなずいた。

 実際の義母と彼氏の関係はわからない。これから他人に戻る人間に話さないといけない理由もなかった。

 戸井田は数年ぶりに会う義母の気持ちを察したつもりだった。

「それで、最後にお食事でも……」

 義母の言葉は弱かった。

 それもそのはずだ。義母となってから外食を何度も誘われた。

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