タイムストッパー
 下を向いて黙ったままだ。

「時間を止まれ……」

 と、戸井田は小さな声で言って、顔を上げた。

「はい?」

 千紗に聞こえたらしいが、真顔だった。

「あの、ホットドッグを……」

「あの、すいません、ただ今、売り切れ中ですけど……」

「それじゃ、タバコ……」

「あの、お客さん、すいませんけど、年齢を確認できる物ありますか?」

 戸井田はズボンのポケットをさぐった。

「あっ、ないや……」

「申し訳ないですけど、年齢が確認できませんので、タバコをお売りすることはできません」

 千紗はペコリと頭を下げた。

 戸井田はこんなときに時間が止めたかった。なぜか千紗の前では今回も時間を止められなかったのだ。

「それじゃ、これ……」

 戸井田はガムを手に取り、千紗に渡した。
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