タイムストッパー
 千紗はバーコードを読みこませた。

「百五円になります」

 戸井田は五百円玉を渡し、千紗からお釣りをもらうのを待った。

 待っている時間が長く感じた。

 戸井田は千紗からお釣りを受け取った。

「ありがとうございます」

 千紗はお客に対してのお礼の意味で、頭を下げた。

「あの、俺、あなたのことがすごく気になっています……」

 戸井田はそう言って、胸のポケットから紙切れを出した。

「あの、お客さん……」

 急な行動にきょとんとする千紗だった。

「これ、受け取ってください……」

 戸井田は両手で千紗に突き出した。

「あの……」

 紙切れには電話番号とメールアドレスが書かれていた。

 戸井田は紙切れを受け取るまで、動かないで、ずっと下を向いたままだった。

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