タイムストッパー
「ちょっと、離してくれませんか?」

 と、田久万はおばあさんに言われて我に返った。そのまま恐怖が襲ってきたので、体が勝手に踵を返し、足が動いていた。

 ネットカフェに予定通り行った。

 田久万は身体中、汗まみれだった。一仕事終えた感じだが、メインの読書感想文はまだこれからだ。すぐにインターネットで読書感想文のサイトから感想文の掲載を紙に印刷した。

 田久万は事故現場を避け、遠回りして家に帰った。あまりにも衝撃的な体験をしたので、家に帰っても何もする気はなかった。時計をずっと見ていた。秒針が一秒を刻むのを確かめていた。

 睡魔が襲い、田久万は寝ることにした。その時だった。秒針が止まった。また時間が止まったのかと思った瞬間だった。分針が勢いよく回った。もちろん時計回りである。

 田久万は金縛り状態で、まばたきさえできなかった。地震かと思うほど揺れ、吐き気までした。

 気がつけば二時間が一瞬で過ぎ去ったのだ。

 感覚的には数秒のできごとだが、時間の経過は二時間過ぎていた。何も証明することはできないので、疲労からくる錯覚だと思うことにして田久万は寝たのだ。

 朝になり、起きて昨夜の惨事が夢であることを田久万は心底思った。

 夢ではないことは朝のテレビのニュースで判明した。

 事実だったのだ。
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