タイムストッパー

敗北

 田久万は朝から、ずっと悶々としていた。昨日の夜、千紗から電話をもらい、告白を逃した上に永遠に誰かの者になってしまうような気がして、後悔した。

 話がしたい。

 だが、学校内では大口の目もあるし、茂呂も朝から何度も千紗に告白したのか訊ねてくるので、否定してしまい話すチャンスを逃してしまった。

 茂呂は簡単にあしらったが、周りにいる生徒たちは好奇でも見るような目つきで、さらにわずらわしかった。

 千紗はずっと笑顔を見せていた。もちろん田久万とは話しすらしていなかった。

 そして、放課後になり、千紗が田久万の前まできた。

「日曜日、彼と会うから、時間とか止めて邪魔しないでよ」

 田久万が何か言う前にさっさと、千紗は目の前から消えて行った。

「よ、良かったじゃないですか」

 その口調ですぐに誰かわかった。

「何が?」

「は、肺世さんに告ったんですか。よ、良かったです」

 間の悪い茂呂は勘違いにもほどがある。

「どうしてそう思った?」
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