タイムストッパー

もう一人のタイムストッパー

 田久万は午前中の雨で、さらに憂鬱な気持になった。午後になるとすっかり雨もやんだ。

 音楽でも聴いて気を晴らそうとした。

 スピーカーから何時間も音を出し続けていた。

 いつもよりボリュームを大きくしていたが、家には誰もいなかったので、文句を言う者もいなかったのだ。

 急にスピーカーからの音がしなくなった。

 田久万は故障したのではないかと思い、アンプを見た。

 アンプの電源は入っている。

 CDの電源も入っているが、時間経過を示す数字は固定している。

「もしや……」

 田久万は時間が止まっているのではないかと疑った。

 アンプのボリュームのつまみを回そうとするが動かない。

 やはり時間が止まっているのか。

 田久万は部屋を出るために、ふすまを開けよと試みるが重くて動かない。

 予想通り、時間が止まっているのだ。

 しかし、部屋に閉じ込められている状態で、何もできないのだ。

 つまり、田久万以外にも時間を止められる人物がいるのだ。
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