タイムストッパー

自宅に戻る

 戸井田は午後になり、雨もあがったので、自宅で今日の着る服をさがすことにした。

 千紗とデートをするためだ。

 しかし、自宅に戻るのは本望ではない。父親と顔を合わすのは避けたかった。

 玄関のドアは開いていた。

 前回はここで義母と会った。戸井田の方が先に自宅を出たので、鍵は閉めていない。義母がどうやって入ってかは知らないが、鍵を閉め忘れた可能性もある。

 父親が自宅にいる可能性の方が高いので、靴を脱いで、すぐに時間を止めた。

 自室の前で時間を動かし、部屋にそっと入るとまた時間を止めた。

 服を出すときにまた時間を動かした。服を並べ終えると、また時間を止めて、どの服にするか検討した。

 時間を止める能力について、チャンスがあれば千紗に告白しようと思っている。

 確信はないが、千紗ならきっと理解してくれると高をくくった。

 今はあまり深く考えるのはやめた。

 考えても答えが出るはずもないからだ。今は千紗との時間を大切にしたいことをだけを考えることにした。
< 151 / 176 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop