タイムストッパー

事故後

 憂鬱な朝だった。

 田久万は気を失い、病院に運ばれたが、軽傷なので、その日の夜に家には帰った。

 田久万は誰よりも早く、登校した。

 じっとみんなが登校してくるのを待った。

 昨日の大惨事を今朝の新聞を読んだし、テレビでも見た。

 ヘリコプターが駅前のロータリーに墜落した。

 駅前は爆弾が落ちたような大騒ぎだった。

 死者と負傷者を合わせると百人はいたそうだ。

 身元不明者もいて、その中に戸井田と言う名前の人物は死者に入っていた。しかし、年齢は高齢で、あのときの戸井田ではないと確信できた。まだ生きているのか、それとも身元不明者の中にいるのかわからない。

 一方で不思議な体験をしたと、語る者がいた。

 惨事の現場から瞬時移動したと言うのだ。このことにはテレビではコメントせず流しただけだった。否定も肯定もしない。前に田久万が事故を救ったときと同じだ。

 テレビのニュースではカットするか流しても何も不思議なことには触れないのだ。

 田久万は戸井田が時間を止める能力者であることも知った。

 千紗の母親からお金を盗ったことも千紗のタオルを盗ったこともそして、千紗の心も射止めていたこともすべて戸井田だ。
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