タイムストッパー
 そこで戸井田は時間を止めてお金儲けのことを考えた。

 最初は道行人から財布を抜き盗ろうとしたが、時間が止まっている間は物を動かすことが非常に大変であることに気がついたのだ。お店などのお金を盗ろうにもレジが開いた状態でないといけないので、非常に大変だ。やるなら警察に捕まらないようにやらなくてはならないので、色々考えて銀行強盗が一番確実に思えた。

 今の時代、駅前など防犯のためにカメラが設置してあるのは当たり前の事実だ。

 もちろん銀行にもある。

 時間を止めていれば、決定的な瞬間はカメラに映る心配もない。それに銀行は大量の札束が毎日出し入れされているのだ。

 ATMを利用する客からは時間を止めても奪うのは至難の業だ。

 振り込め詐欺のお陰でATMは十万円までしか利用できない。

 だからカウンターでお金を出し入れする客も増えた。十万円以上の客とすぐにわかるので、戸井田的にも楽になったのだ。

 とは言っても札束を五枚動かすのが限度だ。それ以上だと、重くて動かせないし、刃物ように紙が鋭く危険なのである。

 戸井田はもう何年も銀行強盗に成功していたので、銀行の窓口でお金の出し入れをする人物の行動は把握できていた。

 同じ銀行に頻繁に行かないようにしていた。

 一ヶ月に一回が限度だ。

 
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