タイムストッパー
 田久万は時間が止まるように念じた。お尻が床についていたので、立ち上がった。

 動いている。

 田久万はもう一度、念じた。

 止まることはなかった。

 時間を止める能力は勘違いだったのか。そう思うのが一番理解できる。

 田久万は感情を抑えるのができなくなっていた。かばんを持って、教室を飛び出した。

 一階のロッカーまで行くと、茂呂がいた。

「おい、千紗はどこだ!」

 田久万は脅すような強い口調で言った。

「あっ……」

 茂呂は怖がって、身体を丸めた。目には薄っすらと涙も浮かべていた。

「黙ってたら、わかんねーぞ!」

 茂呂は外に人差し指を向けた。

 田久万は茂呂の右腕から伸びた先を目でさがした。

「いたな!」

 田久万はそう言って、茂呂のお尻を目がけて、右足で蹴った。
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