タイムストッパー
「いてっ……」

 茂呂は口元を手で押さえた。

 田久万は一目散に外履きに替え、千紗を追った。

 一人で歩いていた。背後から田久万は左肩をつかんで、後ろに引っ張った。

 千紗は何度も瞬きをして、この状況が理解できていなかった。

「何?」

 田久万は眉間にシワを寄せ、顔も赤くなっていた。

「もう!」

 田久万は興奮のあまり、言葉がでなかった。

「水で顔でも洗ってくれば?」

「うるさい! ブス!」

「何か用なの? そんなことを言いにきたの?」

「用はお前がブスだからブスって言ってんだよ」

「そう」

 千紗は相手にせず、踵を返した。田久万から一歩ずつ離れて行くようだ。
「待てよ、ブス!」

 田久万は千紗の背後から叫んだ。それでも千紗は立ち止まるどころか早歩きになった。
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