タイムストッパー
 千紗は水泳部なので制服の下は筋肉質だ。この夏休みに部活の練習に明け暮れて、肌も真っ黒かと思いきや真っ白だった。日焼け止めクリームでも塗ったかのようである。

「何だい?」

 大口はとぼけるように答えた。

「弱い者イジメなんてやめない!」

 千紗は大口の顔を射貫くようににらんだ。気の弱い茂呂なら千紗のにらみで泣いてしまいそうである。

「へっ? 茂呂なんかいじめてないよ。なぁ、そうだろ茂呂?」

「そ、そ、そ……」

 大口と千紗の迫力に口ごもる茂呂だった。

「はっきり言ってやれよ」

 大口は茂呂を威圧している。

「い、イジメじゃありません。ただ……」

 もちろん、千紗が望んだ回答をするはずもなく、茂呂は大口を怖がるように小さくなって、震えていた。

「たっく、もう! 茂呂くん、いつでもこの大口のヤロウがいじめたら言って頂戴」

 千紗は大口を再びにらみつけて、席に座った。
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