タイムストッパー
「大丈夫だよ」

 と、戸井田はやさしく言った。

「本当にすいません」

「触れただけだから」

 女子高校生は再び、頭を下げて踵を返して行った。

 かわいい子だと戸井田は思った。あんな子とつき合ったら人生が楽しいだろうとも思った。

 名前はもちろん住所も知らないので、さがしようがない。今、時間を止めれば女子高生を追跡も可能だが、無駄に能力を使って稼げなくなることを考えたので、そのまま見送った。

 いや、こんなに眠くなければ、戸井田は時間を止めて追跡したはずだ。稼ぎのことよりも初対面の女子高校生に恋したのだ。

 一目惚れなど久しぶりな戸井田は胸をドキドキとしながら、家路に急ぐのであった。
< 49 / 176 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop