タイムストッパー
 つまり普段から大口にいじめられているから、他人が声をかけると、いじめられるのではないかと恐怖に震え上がっているようだ。

 田久万の後を茂呂はついてきた。

「茂呂、どこに行くんだ!」

 案の定、大口はいじめる相手が廊下に出るので、気になったようだ。

「……」

 茂呂は立ち止まり、大口の方を向き、口をパクパクさせていた。

「何だ、その顔は! 何か文句あるのか!」

「あ、あ、あり、ありません」

 茂呂は恐怖のあまり硬直した。

「黙れ!」

 田久万は大口に向かって一喝した。

「えっ?」

 大口は田久万が言うとは想像していなかったのだろう。口を開けたままだった。

「早く、廊下に」

 田久万は茂呂を廊下に強引に連れ出したのだ。


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