タイムストッパー
「あ、ありがとうございます」

 休み時間なので、生徒たちの話し声で、田久万は聞き取れなかったが、茂呂が頭を下げたので、すぐに理解した。

「それよりさ、今朝どうした?」

「な、何でもないです……」

 茂呂は下を向いた。

「何でもないって、携帯見て、笑われていたじゃないか」

「あ、あれは……」

「大丈夫だ。何かあれば俺が助けてやるよ。だから、言いな」

「はい……じ、実は昨日、近くの倉庫の敷地で撮影した映像です」

「倉庫でどんな?」

「ボ、ボクが穴に落ちるんです」

「えっ? 倉庫に穴? って言うか、場所はどこだ? 意味がわからんぞ」

「せ、先月か先々月くらいにつぶれた倉庫です」

「ああ、公園の隣にある倉庫か?」

「そ、そうです」

「あそこの倉庫に穴があったのか?」

「い、いえ違うんです」
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