タイムストッパー

 戸井田は帰宅すると、睡魔に負けてすぐに寝た。

 夢はあまり見ない方だった。今日に限っては違うようだ。

 戸井田の前に女子高校生が現れた。肩が触れただけの初対面の子だ。周囲は何もなく、真っ暗な空間だ。

 彼女は何かを話している。戸井田は耳を傾けるが聞こえない。

 さらに耳を口元に近づけた。息が耳にかかるのが夢なのに生温かさを感じた。

「ダメ、ダメ、ダメ……」

 と、彼女は小さい声で連呼した。

 ダメ?

 戸井田には何がダメなのかわからない。

「ダメって何がダメなの?」

 戸井田は彼女に尋ねた。

 すると彼女は微笑んで、明るい光に包まれた。

 戸井田が彼女に触ろうと、手を伸ばしたがスッと消えた。

 すると五メートル先に彼女は現れた。

 戸井田は彼女に近づき、触れようとするとまた消えた。

 真っ暗だった背景は急に明るくなり、原っぱに建物が一棟だけあった。高い。永遠に続いているようで、屋上は雲で隠れている。
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