タイムストッパー

携帯電話

 田久万は休み時間中、茂呂のそばにいた。大口には、この決着は昼休みにと提案した。授業の合間の休み時間では時間が短すぎて、話は途切れるからだ。

 田久万は千紗もチラチラと見た。話す機会をうかがっていたが、休み時間の間は教室にいなかった。

「それで、大口にどんないじめされた?」

 田久万は茂呂から情報を集めようとするが、答えないのだ。

 いじめについては否定するだけで、田久万を困らせた。

 田久万は茂呂と話すことがなくなった。

「好きな子はいるか?」

 と、聞いても黙ったままだ。

「じゃ、好きなアイドルは?」

 と、聞くと一瞬、微笑むが言葉は発しない。

 非常にやりにくい。

 短い休み時間なので、田久万は何とか辛抱できたのだ。

 正直、茂呂をいじめから救うのは難しいと思った。千紗と慶子の問題がなければ行動はしないと田久万は確信した。

 そして昼食の時間になった。いつもと変わらないが、田久万だけは緊張していた。

 食欲はあるのだが、噛み切らずにのどに流しこむ感じで、味わっていないのだ。
< 58 / 176 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop