タイムストッパー
　教師が昼食を終えて、教室を出て行くと、雰囲気が変わるのが田久万にはわかった。

　他の生徒たちもこれから起こることが気になるようだ。いつもなら、教室はガラガラなのに、今日は満員状態だ。他のクラスの生徒もいるようだ。

　きっと玲が言いふらしたに違いない。

　いよいよ対決のときがきた。

　大口の横には席に座っている慶子がいて、もちろん玲もいる。田久万はその輪に向かった。後ろから茂呂が金魚の糞のようについてきている。

　田久万は対決が始まる前に千紗が教室を出て行ったのを確認した。だから今は教室にいない。

　田久万と大口は向き合った。野次馬の生徒たちはふたりが殴り合うのを期待して、観戦している。

「どこまでだっけ？」

　大口は余裕があるようだ。舌を出し、田久万を挑発している。

　生徒たちの笑い声が聞こえ、大口は右手を握り、ガッツポーズをした。

「携帯に映っている茂呂の件だ」

　田久万は声を押し殺して言った。

「だから、あれはいじめじゃないって言ってんだろ！」

「いいや、絶対にいじめだ！」
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