タイムストッパー
「いじめているんじゃないことがわかっただろう。いじめているなら笑えないもんな」

 田久万の持っていた携帯電話は取られ、他の生徒たちが回して見ると、すぐに爆笑した。

 大口は生徒たちが爆笑しているのを見て、満足のようだ。ニコニコとほおを緩めていた。

「どうだ、面白いだろう? だから、それを今度、ネットで配信しようかと思うんだ」

 田久万は大口の言っていることは正しいのではないかと思ってきた。茂呂はいじめではないと否定している上に、生徒たちの爆笑している姿を見聞してしまったので、インターネットを使用して世界に発信するアイディアは素晴らしいと絶賛したくなった。

 田久万の肩を誰かが叩いている。振り返ると、茂呂だった。教室は爆笑の渦で茂呂が何を言っているか聞こえないので、田久万は耳を近づけた。

「い、嫌です。インターネットにあの映像を流されるのは嫌です」

 あれほど我慢強い茂呂が今さら、嫌がるのが田久万には理解できなかった。

「何だよ、それ」

 爆笑の中、田久万の発言も誰にも気づかれることはなかった。

『時間よ、止まれ!』

 田久万はそう念じた。

 すると、急に静かになった。
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