タイムストッパー

サイレン

戸井田は目が覚めた。

 息苦しさで、咳きこんだせいだ。目の前は真っ白だった。

 夢か?

 鼻から焦げた臭いがした。

 戸井田は呼吸が停止するので、すぐに時間を止めた。

 危なかった。

 目の前は真っ白で視界が遮られているが、住み慣れた自宅なので、玄関までは辿りつけた。

 ドアは閉まっている。時間を止めたままではドアは開けることは無理なので、時間を動かし、ドアから出た。

 やっと新鮮な空気が吸えて、命が助かったと、戸井田は実感した。

 モクモクと白い煙が出てくる。

 戸井田は玄関に消火器があったので、息を止め出火場所の自分の部屋まで走った。

 煙は部屋中を覆っていた。

 戸井田は消火器のレバーをおもいきりつかみホースの先を火元に向けた。

 時間は長く感じられた。

 火が消えると、床は真っ黒に焦げていた。

 サイレンの音が聞こえる。近所の人が消防署に通報したのだろう。
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