タイムストッパー

時間停止の中で田久万と千紗

 田久万は千紗にキスをした現場を見られたと思った。

「どうなってんの?」

 千紗はあわてている。慶子の前に田久万が背を向け、千紗とは向き合った状態になった。

「何もしていないよ。それより、昨日は……」

 田久万は否定し、昨日の暴言を謝ろうとした。

「当たり前でしょう。何で、みんな動かないの?」

 千紗は昨日のことと、現在起こっていることが混同しているようだ。

「何だ、そんなことか」

 田久万は安堵した。千紗には慶子とキスをしていたところを見られてないようだし、昨日のことは記憶から消えたようでもあった。

「そんなことって、さっぱりわかんないよ」

「まあ、あわてるなよ」

「そんなノンキなこと言っても、わかるように説明して」

「時間が止まっているんだ!」

「ええっ? 言っていることがわかんないよ」

「だから、時間が止まっているんだ」

「どうして?」
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