タイムストッパー

きっかけ

 戸井田はネットカフェでくつろいでいた。特にやることはないのだ。

 パソコンの電源を入れた。

 すぐに立ち上がり、検索で『事故』と入力した。

 一覧表示され、一番初めの記事をクリックした。

 写真つきでニュースは報じ、場所もこの近所だったので、興味がわいたのだ。

 電車に衝突した車の写真は誰が見ても、大惨事だと、言ってしまうほど損傷が激しかった。電車はへこみ、車は横倒れで大破しているのに死者はもちろん重体だった者さえいなかった。

 その意味では奇跡と言えよう。

 記事を読むと、車を運転した靴虫浩が酔って、ブレーキとアクセルを間違え、さらにはハンドルを切り過ぎていたため、踏み切り近くで横転した。

 踏み切り前も幸い人がいなかったので、車は勢いよく、線路内に進入した。

 電車も発車したばかりで、車掌がすぐに惨事に気づき、停車を指示した。

 戸井田はこの記事を読み、この惨事に父親が巻き込まれて、死んでくれれば、最高と思った。例え時間を止める能力があっても、殺人には使えない。先日のボヤ騒ぎでも、父親は家にいなかった。

 悪運が強いと思い知らされるのだった。

 そもそも戸井田の人生の分疑点は高校生のころだった。

 高校を退学したのは父親の責任だ。授業料が払えなくなり、当然退学になることは目に見えていた。
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