タイムストッパー
「屁理屈を言うな！」

「うせっ、バカ！　停学？　退学するよ。もう、こんなバカの教師のいるところ何かこねーよ！」

　戸井田はこの言葉を残して教室を飛び出した。

　それから、退学届を出しに高校に行った。教師に会うわけではないが、変な緊張をした。身体中が汗ばんだ。門をくぐり、事務専門の窓口に向かった。自動ドアではないが、ドアは開いたままだったので、窓口で呼び出しボタンを押した。

　しばらくして、曇りガラスの戸が開いた。三十代の男性事務員に戸井田は退学届を差し出した。

　急に静かになったのだ。

　戸井田はガラス戸の内部をのぞくと、誰も動いていないのだ。目の前にいる事務員に退学届けを持ったままだった。事務員の手に触れると、人間の皮膚の弾力はなく、マネキン人形のように硬かった。

　これは現実か？

　戸井田は事務室の横に中に入るドアを見つけた。ドアノブを回すがゆっくりと動くが、肝心のドアは押しても引いても、重くて微動だにしない。

　あきらめた。

　戸井田は校内に入るためにロッカーに向かった。

　ロッカーに入るドアは開いていたので、問題なく入れた。

　校内に入ってすぐ、生徒たちがいたので、休み時間だろうとわかった。
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