タイムストッパー

放課後

 放課後、教室はにぎわっていた。

 大口の目の前から田久万が急に消えたからだ。

「さっきはどうやって目の前から消えたんだ?」

 大口は不思議そうに田久万の顔をジロジロとながめながら聞いた。

「消えた?」

 田久万どう説明したらいいか、迷ったのでとぼけることにした。

「そうだよ。あんな大勢がいて、それも仕掛けを使った様子もなく、いや、一瞬、暗くなるとか、外で大きな音がして気をそらしている間に隠れるとかするならわかるが、いや……」

「知らんよ」

「茂呂だって気になるだろ」

 大口にうながされて、茂呂はうなずいた。それも笑顔である。

「ちっ!」

 田久万は思わず舌打ちをした。

「うーん、わからんな」

 大口は考えている。このままほっといてくれればいいのだ。そのすきに逃げるしかないと田久万は思った。

「肺世さんと抱き合っていたんだって」

 田久万は聞きなれない名字を言われたので、自分には関係ないと思った。
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