タイムストッパー
「いいな、俺も誰かとつき合っちゃおうかな。それより、消えたトリックを教えてよ」

 大口はよほど消えたことが手品であるように思っているようである。

「……」

 田久万はショックで答える気力もなかったが、慶子を目でさがした。

 やはり、教室にはいなかった。草間にでも会いに行ったのだろう。

「実はな、茂呂を使って、落とし穴に落としたのには理由があるんだ。みんなあの映像を見て笑った。あそこまで笑えるまで、何度も撮影したんだ。そして、あの映像のとき、茂呂に穴に落ちたら泥水を飲めって指示したんだ。茂呂は嫌がったが、飲みこまなくていいから、口に含めって言ったんだ。そして、すぐに口から吐けって指示した。そのときできるだけ派手に動けって指示はした。茂呂は一発で俺の指示通りに動けたさ」

 大口は長々と田久万にいい訳を話しているような感じだった。

「あれは面白かった」

 と、玲が感想を言った。

「あんだけ受けたから、動画サイトに投稿しようと思うんだ。いいな、茂呂!」

「は、はい……」

 茂呂は急に名指しされ、驚いて返事をしただけだった。
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