タイムストッパー
「うん、時間を止めると主張して、色々と悪さをするらしい。具体的に言うと、物を盗むことは日常茶飯事で、殺人までやっているって噂だよ」

「殺人? 時間を止めてどうやっているの?」

「電車のホームで立っていると、いきなり時間を止めて、線路内に落とし、気がつけば目の前には電車がきているわけだから、警笛音は鳴らさないし、ブレーキをかけるのも遅れるわけだから、轢かれて死んでしまうんだ」

「怖い……」

「まだ、あるよ。普通に歩いていたら、視界が急に変わったと思ったら、空を歩いていて、そのまま落下。そして、落下地点にもちょうど、人がいて二人共も死んじゃったらしい。落ちた人はもちろん、遺書などなく、周囲の人からナゼ自殺したのかわからないらしいよ」

 大口の言っていることは間違っている。時間を止めると、人など動かすのは大変で、殺人を犯すなどありえない。

「コワ~い!」

 玲の顔の方がよっぽど怖いと田久万は思った。

「田久万くん、手品と考えると無理がある。でも、時間を止められるなら納得はするよ」

「……」

 田久万は時間を止めることなど誰にも信じてもらえないと思っていたが、大口が発言したことで、クラスにいる生徒たちの歓声が起こる。能力について肯定的に受け取ってくれそうだ。
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