タイムストッパー
「まずは大きい札から……」

 戸井田は下を向いていたが、店員が札を差し出したのは目に入ったので受け取った。

 一連の動作で硬貨とレシートを店員は突き出し、戸井田はさっと手の中にぎゅっと握りしめた。

 戸井田は顔を上げ、時間を止めようとした。

「あっ!」

 思わず、声が漏れた。目の前にいるのはあの女子高校生だった。

 戸井田はずっと見つめてしまった。

「どうかしましたか?」

 と、女子高生は顔を傾け、戸井田の顔をマジマジと見つめた。

 時間は止めたはずだった。

 今日に限って止まらない。

 止めたつもりが、戸井田は女子高校生に見とれてしまったので、止められなかった。

 戸井田は急いで、時間を止めようと念じたが、止められなかった。

 側から見て戸井田の方が止まったように見えた。



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