子犬系男子
3
教室に入るな否や先生が遅刻の理由を問い詰めようと「二ノ宮!」と言って私に迫ってきたが、私のげっそりした表情を見るなり「つ、次からは気をつけるように」と言って教卓に戻って行った。
ホームルームが終わるとすぐに沙有里ちゃんが近づいてきた。
「愁ちゃんが遅刻なんて珍しい!どうしたの!?ねぇ!!」
私の肩をガンガン揺らしながら聞いてくる沙有里ちゃん。
なんか今日テンション高くないか?うるさい。
「愁ちゃん!!」
なかなか答えない私に沙有里ちゃんがソワソワしている。
「えっと…人懐っこい子犬に捕まっていたというか…」
そう答えると沙有里ちゃんが「犬!?」と言ってきた。
あながち間違ってないと思う。
「そう、まさに犬」
「愁ちゃん犬好きだもんね~」
うん、なんか違うけどめんどくさいからそういうことにしておこう。
1人で納得していた沙有里ちゃんが思い出したように喋り出した。
「そういえばね、昨日の合コン!
大成功!!イケメンのメアドも無事ゲット致しました~!」
そう言ってずいっと携帯を私に差し出してきた。
「よかったね、沙有里ちゃんの機嫌が良いわけだ。」
自分の好みのタイプが多かったのだろうか、いつにも増して沙有里ちゃんの機嫌がよく見える。
もう授業が始まるから、と沙有里ちゃんは自分の席に戻って行った。
私も1限目の授業の支度をして席に着いた。
1限は英語か…憂鬱だな。
*
1限の英語から憂鬱な教科が2、3、4限と続いたがなんとか乗りきった。
途中、何度も襲ってきた睡魔にたびたび頭を机にぶつけたりはしたがなんとか乗りきった。
さぁ、お昼だ!といそいそと鞄からお弁当を取り出して沙有里ちゃんの元へ向かおうと席を立った時、教室がざわついた。
なんだなんだとドアのほうを見ると子犬がいた。いや、七瀬くんがいた。
たぶん私に用があるのだろう。
でも私は無視を決め込む…が、やはり七瀬くんは笑顔で私の前に立ちはだかった。