隣人M
最終的な人物関係(ネタバレ)
隣 人 М 特 別 資 料
結城克己(16歳(302番)・24歳)
16歳の克己は、24歳の「現実世界」の克己が、心の中に創り出した、「叶えたかった夢」「理想」であった。
勉強、バスケットボール、生きている親、戦争のない世界、「普通」、音楽と部活に一途なライバル・親友夏彦、初恋の幼馴染夕夏。それら全てが、24歳の克己の心の産物であった。
24歳の克己は、元兵士。夏彦(椎名)をかばって重傷を負い、そのショック(失血性と精神性)で、心を病む。野戦病院に収容され、心が崩壊しつつあったところを、心療外科医になりたてだった椎名に引き取られ、世話を受けることに。椎名のオフィスの隣に、部屋を与えられて、ベッドに寝ている。また、椎名が帰宅する際は、車いすに乗って、一緒に帰る。
24歳の克己の心は、崩壊しつつあり、椎名と夕夏は治療のために、彼の心に踏み込む。その際、16歳の克己と接触したことで、24歳の克己の心に影響を与え、「干渉」した(「干渉」自体は、心療で起こりがちなこと)ために、16歳の克己が、「隣人」、すなわち24歳歳の克己の「心の支柱」、「グレートマザー」(隣人М)に関心を寄せ、「気になる」きっかけとなる。克己のマンション自体が、24歳の克己の心の中心そのものであった。ゆえに、最後までマンションは、崩れはするが、崩壊はしなかった。
物語の最後では、24歳の克己と16歳の克己が「交流」した。現実の克己が、心の中に語りかけることで起きる現象。この時点で、24歳の克己の心そのものが、肉体から遊離しつつあった。そして、最終的に彼は、肉体を「夢」、つまり16歳の克己に譲り渡すことになる。
16歳の克己が、現実を生きるようになった時、心の中に残った夕夏と椎名の「痕跡」が、肉体に現れた。すなわち、椎名の腕の傷跡、夕夏の指輪である。8年後、彼が夕夏や椎名と再会できるかは、運命のみぞ知るところである。彼は、おそらく椎名や夕夏の知識を元に、反心療組織(山口あすかのいる組織)に加担する、心療外科医に準じる存在になっていくことであろう。
椎名和馬(24歳)
心療外科医。元兵士(克己の戦友で、同じ部隊)。旧名・神楽夏彦。戦争を嫌い、争いを生む人間の心の醜さを憎んで、心の手術を執刀して(心療手術)、人間存在を「完璧」なものにすることを願い(ジャクラー派、心療理論の最大学派が提唱)、医師になった。
16歳の克己のマンションの管理人。病原302番としての彼を観察し、24歳の克己の心(マンション)を管理するゆえに、「管理人」なのである。16歳の克己が、「隣人」のことを切り出したとき、彼は自分と夕夏の、克己の心への「干渉」が起きたと気付く。そして、その後すぐに彼の抹殺、すなわち24歳の克己の心の治療へと入る。
腕に傷跡があるのは、夕夏をかつてかばって負傷した際に残ったもの。古傷ではあるが、残した過去の記憶が少しでもよみがえると、その痛みも想起される。
コーヒー派だが、普段は紅茶(ストレート)を飲む。夕夏に合わせてのことである。夕夏への恋も、残した過去の記憶がなせる業であると、椎名は気づいているが、あえてそのままにしており、「不完全な」心療外科医であると自嘲する。それでも、時には「完璧」でないことを引け目に感じることもあるようだ。
過去の戦争の記憶を削らなかったのは、その辛さに付随する夕夏と克己に出会った記憶を失わないため。不幸と幸福がコインの裏表であり、一方をなくせばもう一方が失われることに、椎名は気づいており、苦渋の決断だった。それほどまでに、親友と恋を大切にした男であった。
反心療派の暗殺者、山口あすかのボスによる爆破テロにより、重傷を負い、その傷がもとで、命を落とす。彼が最後にこだわったのは、親友の心の中で、「人間らしく」最期を迎えることであった。また、16歳の克己に、転送装置を託し、外界に彼が出ていくことを促す。それは、椎名が16歳の克己を「病原302番」ではなく、真の克己と認めた瞬間でもあった。そして、そのことは夕夏にも、24歳の克己の崩壊する心にとどまり、真の「支え」となるように覚悟を促すことにつながった。
このことにより、現実を生きるようになった16歳の克己の、現在の「グレートマザー」は、椎名と夕夏である。椎名は息を引き取ったが、夕夏の命は絶えておらず、8年後に彼らが再会できるのかは未知数のまま(心に現実世界の人間が残るという事件は、心療では「事故」であり、椎名はともかく夕夏の命の保証はない)。
水町夕夏(24歳)
心療外科技師。椎名の助手。愛銃は、克己から昔もらったものであり、彼女にとっての克己は、幼馴染以上の存在であり、兄のような、友人のような、恋人のような、家族のような、かけがえのない存在。16歳の克己へは、だんだんと弟のような、恋人のような気持ちを抱くようになった。
常に「完璧」でありたいと願っていたが、それは辛い戦争の過去に苦しむこと、また心療手術に椎名が「失敗」したことによる、「完璧」への憧憬増幅に由来する願望であり、「願望」があること自体、「完璧」ではない、と焦る。
手術を受けた人々が行う、改名(過去と決別する)はしていないが、それは克己にもう一度自分の名を呼んでもらいたいというかすかな希望である。
かつて、手術が失敗した際に、カウンセリングをしてくれた椎名に対して、「陽性反応」により(サポーターである精神科医師に対し、恋愛感情に似た気持ちを抱くこと)、ひかれた時期もあった。それは、最後まで克己の気持ちに素直に応えることができないという、罪悪感に似た感情を引き起こす。だが、指輪は受け取り、彼の「グレートマザー」と化した。
彼女が紅茶(ミルクティー)を好むことが、物語のキーポイントになる。16歳の「夕夏」も、紅茶を好んだが、それは24歳の克己の記憶に基づく。また、椎名の嗜好にも影響を与えた。
仕事が休みの日には、克己との約束の場所、「シャンパニオン公園」(現実世界では廃墟)で過ごしていた。この時には、戦争、特に克己の記憶があること、ひいては手術の失敗による約束の忘却がなされなかったことに対して、椎名に「感謝する」と発言。椎名は、後に夕夏の親友・暗殺者あすかの口からその言葉の真実を知る。
あすかとは親友同士(克己の心の中では、バスケ部のマネージャー同士)だが、克己を助けるために、「反心療派」組織を抜け、「敵」である心療推進派、心療外科技師になった。このため、もし克己の心から帰還していても、椎名のように、親友あすかや、元の盟友たちから命を狙われることになったと考えられる。
克己の「グレートマザー」(隣人М)であった「夕夏」は、彼女をより理想化したものであり、克己の心で「彼女」に触れたため、「交流」が可能となった。仮定ではあるが、「彼女」が崩壊する克己の心から、夕夏と椎名を守ってくれるかもしれない。心療上、「グレートマザー」との「交流」はありえないとされているが、夕夏は克己の「グレートマザー」であった「夕夏」と「交流」に成功した。それは、治療者が患者の「グレートマザー」であったという稀有な事例だったためである。
山口あすか(24歳)
反心療派組織から差し向けられた、暗殺者。椎名と夕夏の抹殺のため、秘書として椎名のオフィスに潜入した。「完璧」であることが雇用条件だったため、椎名から心療手術を受けた後、もぐりの医者から「再生手術」を受けた。
夕夏とは親友であったため、夕夏とオフィスで遭遇することもあったと思われるが、夕夏はなんら手を打っていない。それは、彼女の覚悟であったのか、それとも彼女と克己がかつて反心療組織にいたことを、今は椎名や周囲に伏せておきたかったためなのかは不明である。
物語中盤で、椎名の暗殺に踏み切るが、彼の「プライド」に触れ、己の行為が正義なのか過ちなのか、考えとまどう瞬間に行きあたった。その時、彼女がうまく暗殺をなしうるか、監視していた反心療派のボスが、彼女が裏切ったと判断し、遠隔操作で爆破テロを行った。爆弾は、彼女が出発前にボスから預かった銃に、ひそかに取り付けられていた盗聴器と、連絡用のインカムであった。椎名と共に爆破に巻き込まれるが、けがの応急処置がよかったため、一命をとりとめた。その際、隣室にいた24歳の克己を救っている。物語の最後では、医師としての椎名の知識を受け継いだ16歳の克己から、きちんとした治療を受けている。
椎名曰く、「暗殺者の器でない」ようだ。冷静な判断力により、迷わずターゲットを殺害することよりも、ターゲットの言葉にゆすぶられ、暗殺をしばし躊躇してしまう。もともと反心療組織では、子供のころからテロリストに仕立て上げる訓練を受けていたが、本来の彼女の「情緒的」で「やさしい」面は、心の再生手術によってよみがえった。それがボスの読み間違いであったのか、あるいは彼女が、暗殺が成功しても失敗してもよい「捨て駒」だったのかは、判然としない。
彼女が克己に、反心療派の真実を告げて去るのか、それとも彼と共に行動することになるのか……。それは、「隣人М」の新しいストーリーを紡ぐことになるかもしれない。
結城克己(16歳(302番)・24歳)
16歳の克己は、24歳の「現実世界」の克己が、心の中に創り出した、「叶えたかった夢」「理想」であった。
勉強、バスケットボール、生きている親、戦争のない世界、「普通」、音楽と部活に一途なライバル・親友夏彦、初恋の幼馴染夕夏。それら全てが、24歳の克己の心の産物であった。
24歳の克己は、元兵士。夏彦(椎名)をかばって重傷を負い、そのショック(失血性と精神性)で、心を病む。野戦病院に収容され、心が崩壊しつつあったところを、心療外科医になりたてだった椎名に引き取られ、世話を受けることに。椎名のオフィスの隣に、部屋を与えられて、ベッドに寝ている。また、椎名が帰宅する際は、車いすに乗って、一緒に帰る。
24歳の克己の心は、崩壊しつつあり、椎名と夕夏は治療のために、彼の心に踏み込む。その際、16歳の克己と接触したことで、24歳の克己の心に影響を与え、「干渉」した(「干渉」自体は、心療で起こりがちなこと)ために、16歳の克己が、「隣人」、すなわち24歳歳の克己の「心の支柱」、「グレートマザー」(隣人М)に関心を寄せ、「気になる」きっかけとなる。克己のマンション自体が、24歳の克己の心の中心そのものであった。ゆえに、最後までマンションは、崩れはするが、崩壊はしなかった。
物語の最後では、24歳の克己と16歳の克己が「交流」した。現実の克己が、心の中に語りかけることで起きる現象。この時点で、24歳の克己の心そのものが、肉体から遊離しつつあった。そして、最終的に彼は、肉体を「夢」、つまり16歳の克己に譲り渡すことになる。
16歳の克己が、現実を生きるようになった時、心の中に残った夕夏と椎名の「痕跡」が、肉体に現れた。すなわち、椎名の腕の傷跡、夕夏の指輪である。8年後、彼が夕夏や椎名と再会できるかは、運命のみぞ知るところである。彼は、おそらく椎名や夕夏の知識を元に、反心療組織(山口あすかのいる組織)に加担する、心療外科医に準じる存在になっていくことであろう。
椎名和馬(24歳)
心療外科医。元兵士(克己の戦友で、同じ部隊)。旧名・神楽夏彦。戦争を嫌い、争いを生む人間の心の醜さを憎んで、心の手術を執刀して(心療手術)、人間存在を「完璧」なものにすることを願い(ジャクラー派、心療理論の最大学派が提唱)、医師になった。
16歳の克己のマンションの管理人。病原302番としての彼を観察し、24歳の克己の心(マンション)を管理するゆえに、「管理人」なのである。16歳の克己が、「隣人」のことを切り出したとき、彼は自分と夕夏の、克己の心への「干渉」が起きたと気付く。そして、その後すぐに彼の抹殺、すなわち24歳の克己の心の治療へと入る。
腕に傷跡があるのは、夕夏をかつてかばって負傷した際に残ったもの。古傷ではあるが、残した過去の記憶が少しでもよみがえると、その痛みも想起される。
コーヒー派だが、普段は紅茶(ストレート)を飲む。夕夏に合わせてのことである。夕夏への恋も、残した過去の記憶がなせる業であると、椎名は気づいているが、あえてそのままにしており、「不完全な」心療外科医であると自嘲する。それでも、時には「完璧」でないことを引け目に感じることもあるようだ。
過去の戦争の記憶を削らなかったのは、その辛さに付随する夕夏と克己に出会った記憶を失わないため。不幸と幸福がコインの裏表であり、一方をなくせばもう一方が失われることに、椎名は気づいており、苦渋の決断だった。それほどまでに、親友と恋を大切にした男であった。
反心療派の暗殺者、山口あすかのボスによる爆破テロにより、重傷を負い、その傷がもとで、命を落とす。彼が最後にこだわったのは、親友の心の中で、「人間らしく」最期を迎えることであった。また、16歳の克己に、転送装置を託し、外界に彼が出ていくことを促す。それは、椎名が16歳の克己を「病原302番」ではなく、真の克己と認めた瞬間でもあった。そして、そのことは夕夏にも、24歳の克己の崩壊する心にとどまり、真の「支え」となるように覚悟を促すことにつながった。
このことにより、現実を生きるようになった16歳の克己の、現在の「グレートマザー」は、椎名と夕夏である。椎名は息を引き取ったが、夕夏の命は絶えておらず、8年後に彼らが再会できるのかは未知数のまま(心に現実世界の人間が残るという事件は、心療では「事故」であり、椎名はともかく夕夏の命の保証はない)。
水町夕夏(24歳)
心療外科技師。椎名の助手。愛銃は、克己から昔もらったものであり、彼女にとっての克己は、幼馴染以上の存在であり、兄のような、友人のような、恋人のような、家族のような、かけがえのない存在。16歳の克己へは、だんだんと弟のような、恋人のような気持ちを抱くようになった。
常に「完璧」でありたいと願っていたが、それは辛い戦争の過去に苦しむこと、また心療手術に椎名が「失敗」したことによる、「完璧」への憧憬増幅に由来する願望であり、「願望」があること自体、「完璧」ではない、と焦る。
手術を受けた人々が行う、改名(過去と決別する)はしていないが、それは克己にもう一度自分の名を呼んでもらいたいというかすかな希望である。
かつて、手術が失敗した際に、カウンセリングをしてくれた椎名に対して、「陽性反応」により(サポーターである精神科医師に対し、恋愛感情に似た気持ちを抱くこと)、ひかれた時期もあった。それは、最後まで克己の気持ちに素直に応えることができないという、罪悪感に似た感情を引き起こす。だが、指輪は受け取り、彼の「グレートマザー」と化した。
彼女が紅茶(ミルクティー)を好むことが、物語のキーポイントになる。16歳の「夕夏」も、紅茶を好んだが、それは24歳の克己の記憶に基づく。また、椎名の嗜好にも影響を与えた。
仕事が休みの日には、克己との約束の場所、「シャンパニオン公園」(現実世界では廃墟)で過ごしていた。この時には、戦争、特に克己の記憶があること、ひいては手術の失敗による約束の忘却がなされなかったことに対して、椎名に「感謝する」と発言。椎名は、後に夕夏の親友・暗殺者あすかの口からその言葉の真実を知る。
あすかとは親友同士(克己の心の中では、バスケ部のマネージャー同士)だが、克己を助けるために、「反心療派」組織を抜け、「敵」である心療推進派、心療外科技師になった。このため、もし克己の心から帰還していても、椎名のように、親友あすかや、元の盟友たちから命を狙われることになったと考えられる。
克己の「グレートマザー」(隣人М)であった「夕夏」は、彼女をより理想化したものであり、克己の心で「彼女」に触れたため、「交流」が可能となった。仮定ではあるが、「彼女」が崩壊する克己の心から、夕夏と椎名を守ってくれるかもしれない。心療上、「グレートマザー」との「交流」はありえないとされているが、夕夏は克己の「グレートマザー」であった「夕夏」と「交流」に成功した。それは、治療者が患者の「グレートマザー」であったという稀有な事例だったためである。
山口あすか(24歳)
反心療派組織から差し向けられた、暗殺者。椎名と夕夏の抹殺のため、秘書として椎名のオフィスに潜入した。「完璧」であることが雇用条件だったため、椎名から心療手術を受けた後、もぐりの医者から「再生手術」を受けた。
夕夏とは親友であったため、夕夏とオフィスで遭遇することもあったと思われるが、夕夏はなんら手を打っていない。それは、彼女の覚悟であったのか、それとも彼女と克己がかつて反心療組織にいたことを、今は椎名や周囲に伏せておきたかったためなのかは不明である。
物語中盤で、椎名の暗殺に踏み切るが、彼の「プライド」に触れ、己の行為が正義なのか過ちなのか、考えとまどう瞬間に行きあたった。その時、彼女がうまく暗殺をなしうるか、監視していた反心療派のボスが、彼女が裏切ったと判断し、遠隔操作で爆破テロを行った。爆弾は、彼女が出発前にボスから預かった銃に、ひそかに取り付けられていた盗聴器と、連絡用のインカムであった。椎名と共に爆破に巻き込まれるが、けがの応急処置がよかったため、一命をとりとめた。その際、隣室にいた24歳の克己を救っている。物語の最後では、医師としての椎名の知識を受け継いだ16歳の克己から、きちんとした治療を受けている。
椎名曰く、「暗殺者の器でない」ようだ。冷静な判断力により、迷わずターゲットを殺害することよりも、ターゲットの言葉にゆすぶられ、暗殺をしばし躊躇してしまう。もともと反心療組織では、子供のころからテロリストに仕立て上げる訓練を受けていたが、本来の彼女の「情緒的」で「やさしい」面は、心の再生手術によってよみがえった。それがボスの読み間違いであったのか、あるいは彼女が、暗殺が成功しても失敗してもよい「捨て駒」だったのかは、判然としない。
彼女が克己に、反心療派の真実を告げて去るのか、それとも彼と共に行動することになるのか……。それは、「隣人М」の新しいストーリーを紡ぐことになるかもしれない。