お仕置きゲーム2
寝癖一つ残さず、制服を綺麗に着こなし、柔らかい人懐っこい表情を浮かべ、高取疾風を演じて階段を降りた。とりあえず、昨日の真偽なんて考えたってわからない。気になることはたくさんあるが、自身の評価に繋がらないのであれば関係ない。まあ、誘拐の事は学校で未央に聞けばわかるだろう。軽い気持ちでリビングの扉を開けた。
「おはよう母さん。」
改めて挨拶をすれば、母親は「おはよう。」と笑顔を浮かべた。テーブルの上には3人分の朝食が用意されている。疾風が自分の席に座った時、丁度二階から末っ子の弟が降りてきた。「おはよう、空(くう)」疾風の言葉には返事をせず、黙って席につき朝食を食べ始めた。いつもの事なのであまり気にすることなく疾風も食べ始める。時計を見れば8時をさしていた。そろそろでないと遅刻してしまうな、と考えながら食べ終え、用意を始める。
「空、今日は学校どうするの?」
母親の言葉に「いかない。」と低い声音で呟く弟。それを聞き、呆れた様に溜息をつくというやり取りを毎日見ている疾風は気にすることなく、「じゃあ、いってきます。」と愛想笑いを浮かべて告げた。
「行ってらっしゃいね。」
笑顔を浮かべて玄関に向かい、スニーカーを履いている時、いつもなら朝食を食べた後は部屋に引きこもる弟が珍しく玄関に出てきた。
「...兄貴。」
「空?」
話しかけられた事に少し驚きふりむけば、空は滅多に見せない楽しそうな表情で疾風を見ていた。
「なんだ?」
「2chで見たんだけど、兄貴ってお仕置き少女メグミなの?」
「...は?」
「写メ付きで、兄貴が二代目メグミに決まったって書き込みがあったよ。ファンが、待望の実写化第二弾が始まるのかって、騒いでた。」
「...ど、どういう意味だよ、それ。」
嫌な予感しかしない。空が言っている言葉がよくわからずに聞き返せば「実写化一弾はもう完結したから。ほら、前にえげつない事件があったじゃん?子供が、次々と人を殺害していったっていう。それが一弾だよ。」
クスクスと笑いながら、まるで他人事のように「楽しみだなぁ。一応俺もファンだし、兄貴がメグミなら楽しめそうだ。」と言う。訳がわからず首を傾げれば空は口元を釣り上げ、「行ってらっしゃい。」と唇を動かした。