お仕置きゲーム2
「ッ!」
未央が吃驚して疾風の名前を呼ぶ。疾風も彼の名前を呼ぼうと口を開いたとき、知らない誰かに口を塞がれた。「早く出せ。」運転席に向かってそういう、知らない男の声にぶるりと体が震える。怖い。
(俺、誘拐されてる?)
理解したときにはすでに遅く、車は勢いよく走り出していた。
「安心しろ、君には何もしない。知り合いに、君を連れてくるように頼まれてね。夕ご飯の時間には間に合うように送り届けるから。」
何がなんだかわからず、大きく目を見開いた疾風は自分の口を塞ぐ男を凝視すると、男は「大声を出さないか?」と聞いてきた。頷けば、やっと解放される。
「...なんで、俺を誘拐したんですか。身代金が目当てですか。」
なるべく冷静を保ちそう問えば、男は「違うよ。」と言う。
「...娘を、救う為だ。暫くの間、協力してくれ。」
パッと見、この男が悪い人には見えなかった疾風は「はあ」となんとも気の抜けた返事をした。痛い目にあったり、悪い事に協力させられたりするわけじゃないから、まあいいだろう。
「おおごとにはしたくないので、ちゃんと、帰してくださいね。」
おおごとになったら、家族や友達に迷惑がかかってしまう。いい子な高取疾風という印象から、心配をかける危なっかしい高取疾風という印象に変わってしまうかもしれない。最悪嫌われるかも。
「...。」
殺されるより、よっぽど怖いと感じた。