愛恋歌-tinkle tone-
捨てないで…
大きな目がそう言っている。
だけど…
「ごめんね。あんたを助けてあげることはできないんだ…」
そう言いながら頭を軽く撫でると鼻をすりよせてくる。
甘えてるんだ…
助けてほしいんだ…
手から仔犬の温もりが伝わってきて、切なくなった。
それでも簡単な気持ちで助けることはできない。
それが辛いことは私が一番知ってるから…
「……じゃあね…」
私を見つめる仔犬を残して公園を後にした。
後ろからクンクン…と声は聞こえるけど私の後を追ってこようとはしない。
きっとあの子も分かっているんだ。
捨てられたことを…
公園を出ると外はすっかり暗くなっていることに気付いた。
ネオン街が眩しく目に入ってきたから…。
そして何の迷いもなくホテルの中に入って行った。
たった一言の彰のメールだけで私はここまで来てしまう。
慣れって怖いな…