愛恋歌-tinkle tone-
「………」
冷たい目と怪しく歪む口元に心臓がギュッと掴まれたような、何ともいえない恐怖心が沸き起こった。
「じゃあな…」
琢己はそう言うと背を向け、私の視界から遠ざかっていった。
一際強く髪をなびかせる秋風…
冷たくて身震いする。
でもこの震えはきっと風のせいじゃなくて、最後に見せた琢己の姿が目に焼き付いて離れなかったから…。
自分の手でピリオドをうった恋愛。
間違いだらけの恋人。
この別れは正しかったとも言えるし、間違っていたとも言える。
別れなければあんな思いをせずにすんだのに…
だけど、別れていなければあなたと出会うことはなかったね。
あんな想いがあることも知らないままだったよ。
心と体につけられた傷よりあなたの優しさのほうが大きかったんだ…。