理想恋愛屋
「まだ認めてないのに相手の話なんて、一体どういうことっ!?」
バァァンッと、部屋ごと痺れるような大きな音と共にやってきたのは、もちろんのような彼女。
そしてそのまま、目の前の見知らぬ人物にぱちくりと長いまつげをまばたきさせていた。
間を挟むことなく、ギロリと睨み始める。
ああ、嫌な予感。
「アナタのなの!?」
例のごとく、今しがた来たばかりの来客に剣幕な表情でズンズンと詰め寄っている。
「ちょっと、待てって!」
あわてて二人の間に駆け込む。
今にもとっつかみそうな位の彼女を止めなくては!
「あ、あの……っ?」
戸惑う相手の都合なんか気にするような女じゃない。
だけど、そんなオレの悲痛な叫びは恐ろしくも最悪な方法にて報われる。
「その人は……っ」
ソファーをぐるりと回りこんで小走りになりかけた瞬間だ。
引き込んでいるネットワークケーブルのコードに右足が引っかかってしまう。
もちろん勢いがついてるオレは、そのままのめりこむわけだけど。
前に進もうとするオレはなんとか左足を踏み込んで地面にディープキスは免れた。
が、そのまま突き進んだ先は、あのブラコン娘。
「うっわ……!」
前のめりの体勢を持ち直すことが出来ず、イノシシのごとく突っ込む。
オレの声にさすがの彼女たちも見てきたけれど、それどころじゃない。
「ちょっと、あぶな……!」
彼女の驚きの声をききながら、ドタンッ!!と響かせて、オレは目をつぶって倒れこんでしまった。
……ええ、やってしまいましたよ。
「いってぇ……」
痛みで瞑った瞼を押し上げると、淡い茶色のクセッ毛が視界に飛び込んできた。
そして安っぽい絨毯の感触からかばうように、オレの右腕は彼女の右脇に挟み込まれていた。