理想恋愛屋
「出たな、レンアイヤ・ピンク!!」

 その声でオレはようやく重い瞼を開くと、そこには信じられない光景が。


 ぴったりとしたライダースーツのような、ピンクの全身タイツを身に纏い、胸にはでかでかと星印。

頭にはこれまた同じピンク色のヘルメットで、彼女のクセ毛がちょこんとはみ出している。


 しいて言うなら──そう、いわゆる、子供が好むような戦隊モノのコスチューム。

そしてこの展開。


  冷や汗がどっぷり噴出してくる。


「葵、早くして!」

 急かされるものの、どう考えたっておかしい。


「あ、あのォ、お嬢サン……?これは、なんなの?」


 なぜか緊張が張り詰めたこの現場で、オレ一人理解できていない。

そんなオレを叱るように、チラリと横目で鋭い視線を向けた。


「んもう!変身の仕方忘れたわけ!?とっととお兄ちゃんに連絡して!!」

 そういって彼女は、先ほど萌を襲った男二人組みに走り出していた。


 何が起きているか把握できていない。

とにかく、今は彼女のいうとおりにしてみよう。


 急いで電話帳を開き、彼女の兄・匠さんに連絡をつける。

プルル、という電子音がするとすぐに繋がった。


「もしもし、匠さん……?」

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