理想恋愛屋
「葵さん、早く出動してくださいよ~」

 なぜか呆れられている。

「ちょっと、待て。アナタたちの言っていることが分からないんですけど……」

 受話器の向こうで、はぁ~…と、むしろ軽蔑するようなため息が聞こえた。


 オレがいけないのか!?

とはあえて言わず、兄の指示を待つ。


「いいですか、目の前にいるのはこの世を脅かしている黒ナンパ族です!そしてヤツらから守るために結成されたのが……」

 少し間があった。

かすかに聞こえたのだが、兄のしのび笑い。


「そう!そのためにアナタたち、レンアイヤ戦隊が結成されたんです!」


 ……オレ、暑さでやられたのかな?


 ふと眩暈を起こしそうになり、額に手をやる。

だけど、目の前には兄の言うとおり、黒スーツ姿の男たちと戦う彼女の姿。


 これは夢か?むしろ、ドッキリ……?

そんな考えも横切ったが、なぜかオレには使命感が急激に襲う。


「で、オレ、どうすればいいんですか?」

 とりあえず、ドッキリにしたって、話を進めなければオチも見えない。
この際話にノることにした。

「変身の仕方は、携帯電話を空にかざして『変身!』と叫んでください!」


「わ、わかった……!」

< 109 / 307 >

この作品をシェア

pagetop