理想恋愛屋
 さっきまで街で全身タイツを着て、黒ナンパ族と戦ってたのに。

ぼそぼそと呟いてたのが彼女の耳にも届いたのか、不思議そうに見下ろしてくる。


「クロナンパゾク…?よっぽど打ち所が悪かったのかしら?」

 困ったように頬に手を当てて、考える彼女。

 …う、打ち所・・・?

「もう、やだなぁ、葵さん!」

 そういって現れたのはグリーン、もといオトメくん。

「遥姫さんがあけた冷蔵庫の扉に頭ぶつけたの、覚えてないんですか?」


 開いた口がふさがらない。


「…じゃあ、レンアイヤ戦隊は?」


 オレは言わなきゃよかった。

 だって、こんなこといったら彼女は大笑いするに違いないのは分かっていたはずなのに。


「ぶっ」

 噴出したのは彼女だけではなく、オトメくんまで。

「れ、レンアイヤ戦隊ぃー!?」

 お腹を抱えて笑う二人に、ようやく頭が動き出した。


「バカだぁー!葵、どんな夢みてんのよぉー!」


 バシバシと床を叩いて笑い始める彼女。


 …あれは、夢だったのか!

ほっとしたのと同時に、羞恥心だけがオレを支配した。


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