理想恋愛屋
「う、うるせぇな!元はといえば、お前が…!」


 くっそぉ!なんだって、あんな夢…!


 恥さらしもいいところだ。
ソファから重い腰を上げてデスクに向かうときだ。

腕をぐいっと引っ張られる。

「うっわ、なにすんだよ」

 よろけながらも半身をねじると、掴んできたのは彼女。

笑い涙を浮かべながら、楽しそうに引っ張ってくる。


「ほらぁ、いくわよ?」

 返答も待たずに事務所の外へ連れ出される。

「ちょっと…っ!」

 戸惑うオレを無視して先行く彼女。


「ほーら、早くして!」

「ちょっと待てって…!」


 オレが口にした瞬間、はっと気づく。



 …なんだろう、この展開。

じわり、と額に汗が滲んだ瞬間だ。


「きゃぁぁあああ!」


 誰かの悲鳴。

恐る恐る振り向くと、見たことのある光景。

うつ伏せに、勢いよく転んだと思われる女性。


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