理想恋愛屋
「社長さんがココに連れてきてくれたのよ?」

 そういって、彼女はコーティングされた長いまつげをふさりと少し伏せた。


「えぇ、あっ、そ、そうだったっけ…っ」

 慌てて身を起こして、誤魔化すように笑ってみせた。


 …だって、本当に全然覚えてないんだもん。


 内心涙目になりながらも、彼女が話す一言を漏らさないように必死に拾うしかオレにはできなかった。


 じりじりとその差が詰められてくる。

 ホルターネックの白いドレスの裾が歩くたびに揺れ、白くて細い足元を見るだけでなぜかドキドキする。

ドレスにあわせたようなゴールドのネックレスは、高級感を漂わせている。


 スタイルは、我らの恐ろしい姫君に比べればスレンダーなのだが…。

どこか中性的な雰囲気が、よりその魅力を引き立たせているのではないだろうか。


 この格好からして、大体の見当はついた。



「あ、あの…、オレってばちょっと飲みすぎたみたいで…」


 直視できなくて目線を反らせる。

お気に入りの窓から見える空は、梅雨が明けたばかりの青色が広がっていた。


「もしかして…、本当に覚えてないの?」

 ずずいと覗き込まれ、オレの心拍数は上がる一方。

しまった!と思っても、どう繕っていいか分からず必死に言い訳を考えていた。


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