理想恋愛屋

2.女は強し。

 本当にどうしよう…。

そんな焦りがいっぱいの悩みは、二日酔いのオレに無情にも襲い掛かってくる。


 ガンガンとコメカミを打ち付けるような頭痛の後には、役に立たない後悔ばかり。

目を覚ましてから、ずっとそれの繰り返しだ。


「葵ちゃん、まだぁ?」

 パソコンの画面からひょっこり顔を出すように覗いてきたのは、オレの悩みの種でもある秋さん。

 なぜか秋さんはオレの名刺を持っていて、そしてなぜかオレのことを「葵ちゃん」と呼ぶ。


「す、すみません、もうちょっと時間ください……」

 笑って誤魔化したオレに元気よく「は~い」と返事をした。

のん気に鼻歌を口ずさんで、白いドレスをふわりと揺らしながら事務所内をうろうろしている。


 とにかく、この状況を理解するためにも、オレはオトメくんからのメールの返信を待っている。



 そもそもこんなに記憶をなくすほどに酔っ払ってしまったのは、オトメくんが事の発端だ。


 昨夜、就業時間ギリギリにやってきたオトメくん。

めずらしくおてんばお姫様が夕方に帰ったので、オレもウキウキしてたんだ。

そんなところにやってきて

「葵さん、飲みに行きましょう!」

と、誘ってきたのだ。



< 127 / 307 >

この作品をシェア

pagetop