理想恋愛屋
 ずずいと腕を組みながら一歩躍り出た彼女には、威圧感すら感じられた。

鋭い視線で、少女を上から下まであの出会ったときの品評会のようなオーラを放つ。


 少女も、さすがに目を見開いて次の言葉を待っていた。


 一体、何をしでかすつもりなのか。

彼女の一挙一動に自然と視線が集まる。


 療養といっていたくらいだから、少女の身体は強くないのだろう。


いざとなったら、この身をも挺(てい)してでも守らなくては……!


 オレが決意と一緒に生唾を飲み込んだ瞬間だった。


「一緒に葵を倒しましょう!」


 意味の分からない言葉と期待に満ちた瞳で、少女の白い手をとり固い握手を交わす。

思わずムセてしまったオレは、一時呼吸困難に陥る。


「オレはゲームのボスキャラかっつーの!!」






 ……―そんなわけで。

じゃんけんで決まったチームで卓球のタブルスだ。


 オレに圧勝すると高々と宣言した姫だったが。


「なぁんでよーっ」

と、かわいく空振りしてみせた。



 なんて、簡単にいくわけがなかった。

大口を叩いただけに、自信相応の腕前なのだ。


「あたしに勝とうなんて百年はやいわ!」

 時空さえゆがめてみせた彼女の発言に、オレはつっこむ気さえ失せていた。

< 183 / 307 >

この作品をシェア

pagetop