理想恋愛屋
 真っ赤に照れて嬉しそうに笑う、恋したオトメくん。

いつだって控えめなくせに、ここぞというときは彼女に荷担する彼だけども。


理想恋愛屋に助けを求めに来た、オレの大切な客でもあり……


「オレの大切な友人ですから!」


 放っておけるわけがなかった。

宴会場を飛び出ると、彼女がいつの間にか隣にいた。


「ふ~ん、オトメくん、友達なんだぁ」

 おもいっきりからかう視線で見られていた。

オレはアルコールがすこし入り交じった息を吐きながら走っているというのに、彼女は若さゆえかオレと並んでいる。

そんな彼女の得意げな笑みは、やっぱりニガテだ。

 とぼけるように無言を通していた。


 すぐに縁側にたどり着くと、備え付けてある下駄に履き替える。

あれから会話もなく行き先も伝えてはないけれど、彼女と目的地は一緒だ。








 オトメくんは、少女のところにいる……!



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