理想恋愛屋
連れてこられた広い屋敷には、他の誰もいなかった。
年端もいかない少年がベッドに横たわる少女を心配げにみつめている。
オレはただ黙って、それを部屋のすみっこでみつめていた。
……一時間ほど前のことだ。
ヤドカリ少年から少女を受け取ると、かすかに聞こえるくらいにつぶやいていた。
「瑠璃姉が起きてからね」
無愛想に人に運ばせているとは感じられないほどスタスタと先を行く。
とにかく何か理由があるのだということだけは分かった。
外見の通り、西洋風のアンティークな雰囲気にオレは怯える一方だ。
なにせ仲居さんいわく、幽霊屋敷だからな。
それなのに。
「うっわぁ、楽しそう!行こう、オトメくん!」
彼女は嫌がるオトメくんを引っ張りながら屋敷内を探索している。
もしかしたら、彼女なりの励ましの仕方なのかもしれないけど…多分、少し怖いという気持ちはオレにはわかる。
「ん…」
小さな呻き声は、しっかりオレにも届いた。
「瑠璃姉!」
少年の声にオレも駆け寄った。
そしてタイミングよく、ぐったりしたオトメくんを連れた嬉しそうな彼女が帰ってきた。
うっすらと瞳が開けてゆっくりと上半身を起こした少女は、神秘的にも月明かりに映し出される。
それは夢でも見ているような気分だ。
言葉を失っているオレたちとは対照的に、少年は嬉しそうに少女に抱きついた。
「…琥珀」
少女は傍らで見守る少年の頭をなで、ふっと笑いかける。
だけど先ほどまでの柔らかな雰囲気はどこかへ、ゾクゾクと背筋を凍らすような笑顔にオレの体は固まる。
年端もいかない少年がベッドに横たわる少女を心配げにみつめている。
オレはただ黙って、それを部屋のすみっこでみつめていた。
……一時間ほど前のことだ。
ヤドカリ少年から少女を受け取ると、かすかに聞こえるくらいにつぶやいていた。
「瑠璃姉が起きてからね」
無愛想に人に運ばせているとは感じられないほどスタスタと先を行く。
とにかく何か理由があるのだということだけは分かった。
外見の通り、西洋風のアンティークな雰囲気にオレは怯える一方だ。
なにせ仲居さんいわく、幽霊屋敷だからな。
それなのに。
「うっわぁ、楽しそう!行こう、オトメくん!」
彼女は嫌がるオトメくんを引っ張りながら屋敷内を探索している。
もしかしたら、彼女なりの励ましの仕方なのかもしれないけど…多分、少し怖いという気持ちはオレにはわかる。
「ん…」
小さな呻き声は、しっかりオレにも届いた。
「瑠璃姉!」
少年の声にオレも駆け寄った。
そしてタイミングよく、ぐったりしたオトメくんを連れた嬉しそうな彼女が帰ってきた。
うっすらと瞳が開けてゆっくりと上半身を起こした少女は、神秘的にも月明かりに映し出される。
それは夢でも見ているような気分だ。
言葉を失っているオレたちとは対照的に、少年は嬉しそうに少女に抱きついた。
「…琥珀」
少女は傍らで見守る少年の頭をなで、ふっと笑いかける。
だけど先ほどまでの柔らかな雰囲気はどこかへ、ゾクゾクと背筋を凍らすような笑顔にオレの体は固まる。