理想恋愛屋
「またヤっちゃったんでしょ!?」

 琥珀、と呼ばれた少年は、愛くるしい笑顔で少女の顔を覗きこむ。

「……ああ、そうだったわね」

 何かに気づいたように、独特の間で少年に笑い返すと、次はオレたちを見つめてきた。

「あ……」

 目が合ってしまって、嫌な汗がつぅーっとにじむのが自分でも分かる。


「そんなことより、どういうこと?」


 言葉を探していたオレの背後で、なにも感じない我らの最強プリンセス。

オレの『そんなこと』は、彼女は感じていないのだろうか。

 しかし、これほどまでに心強いと思ったことはない。


「コッチで会うのは初めてか」


 ……―こっち?


 オレたちの疑問すら面倒くさそうに、枝毛を気にするように色素の薄い長い髪をつまむ。


 これからの少女たちの言葉を、一体誰が想像していただろうか。

横目に流したエキゾチックな少女の視線に、ゴクリと固唾を呑みこんでしまった。


「神崎瑠璃、それが私の名前だ」

 雪がみたいといっていた切なげな笑顔はすっかりなく、淡白な口調。

それに加担するかのように、背を向けていた少年は自慢げに振り返る。


「瑠璃姉はトーシュなんだ!」

 キラキラと大きな瞳を輝かせて、出会ったときの無愛想さなんて、まるでなかったようだ。


 それよりも彼の言葉。


「…トーシュ?」



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